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神戸市の旅館業条例はなぜ緩和されたのか ― 宿泊者数データから読み解く

2026年4月、神戸市は「旅館業法の施行等に関する条例」の一部を改正し、ホテル・旅館の構造設備に関する基準の一部を緩和しました。「規制緩和」と聞くと身構える人もいるかもしれません。この記事では、市が公表している資料と宿泊統計をもとに、何が変わったのか、なぜ変えたのか、そして神戸の宿泊市場はどんな状況にあるのかを整理します。

何が変わったのか

改正条例は2026年4月1日に施行されました。市の資料によると、主な変更点は次のとおりです。

### 1. ICTによる無人対応の明文化

2025年3月に厚生労働省の「衛生管理要領」が改正され、自動チェックイン機やビデオカメラなどで従来と同水準の安全性が確保できる場合は、録画による無人対応も認められました。これに合わせ、条例でも基準を明文化しています。

### 2. 構造設備基準の緩和

市が「基準を緩和」と明記しているのは、次の4点です。

- ロビー設置義務の削除:幅員1.4m以上のベッド(ダブルベッド)を置くホテルに、客室数に応じた面積のロビーを義務付けていた規定をなくしました。 - 寝室から入浴設備が見通せる構造の規制を削除:ガラス張りの浴室など、景観やデザインを重視した客室が増えていることが理由です。 - 寝室の有効幅員(1.8m以上)の規定を削除。 - 採光窓の設置場所の緩和:寝室に限らず、客室内にあればよいことになりました。

このほか、玄関帳場(フロント)を置きつつ一部だけICTで対応する「中間型」の施設の基準を明文化したこと、水着着用区域について入浴設備の見通し規制の除外規定を設けたこと、食品衛生法と重複する調理室の規定を削除したことも含まれます。

市が示している理由

市の資料が挙げる理由は、大きく3つです。

- 国の要領の改正:条例は厚労省の要領を参考に作られているため、国の見直しに合わせました。 - 人手不足とICT化:今後予想される労働人口の減少やICT化の進展に対応するためとしています。 - 営業形態の多様化:ICTチェックインの普及で無人化が進み、ロビーに求められる役割が変わったこと、景観やデザイン性の高い客室が増えていることが挙げられています。

注目したいのは、ロビー規制がもともと「秘匿性が高くならないよう規制していた」と市自身が説明している点です。つまり、従来は風俗的な営業を抑える意味合いも持っていた規定を、役割が変わったとして外したことになります。市の資料はこの点を「緩和の目的」とは説明しておらず、あくまで営業形態の変化への対応という整理です。

なお手続きとしては、2025年10月31日に市民意見募集が行われ、2026年2月17日に議案が市議会に提出されています。

神戸の宿泊市場の現状

条例改正の背景には、宿泊需要の伸びもあります。神戸市が2026年9月に公表した2025年の確定値では、市内の延べ宿泊者数は 778.7万人 で、過去最高でした。

| 区分 | 延べ宿泊者数 | 前年比 | |------|--------------|--------| | 全体 | 778.7万人 | 109.1% | | 国内 | 643.4万人 | 103.9% | | 外国人 | 135.3万人 | 143.3% |

神戸観光局は、4月に神戸空港で国際チャーター便の運用が始まったことや、大阪・関西万博の開催が影響したとみています。市は2030年に延べ宿泊者数900万人を目標とし、同年4月には神戸空港の国際定期便の運用開始も予定されています。

全国と比べると

観光庁の宿泊旅行統計によると、2025年の全国の延べ宿泊者数は6億6111万人泊で、2019年比10.9%増でした。都道府県別では、東京都(1億779万人泊)、大阪府(5877万人泊)、北海道(4650万人泊)、沖縄県(3386万人泊)、京都府(3316万人泊)の順です。

神戸市の778.7万人は、規模でいえば京都府の約4分の1、大阪府の約1割強にあたります。ただし市単位と府県単位の比較であり、算出方法も完全には同じではないため、あくまで目安です。

もう一つの特徴は外国人比率です。神戸市は約17%で、全国の3割弱より低くなっています。国内客が中心の都市であり、外国人客が伸びる余地が残っているともいえます。

兵庫県の2025年の外国人延べ宿泊者数は前年比で約29%増えた一方、大阪府は約5%減ったという集計もあります。大阪の宿泊需要が逼迫して周辺地域へ分散した可能性を指摘する見方もあります(この点は推測であり、確定した事実ではありません)。

規制緩和をどう見るか

私見ですが、今回の改正は「需要が伸びる中で、事業者の選択肢を広げる」方向の見直しと読めます。ICTによる無人対応や、デザイン性の高い客室づくりは、人手不足のなかで宿泊施設を運営するうえで現実的なニーズがあるはずです。

ただし、注意したい点もあります。

- 市民意見募集の結果や市議会での議論の内容は、この記事では確認できていません。懸念の声があったのか、市がどう答えたのかは、市のホームページや議会の会議録で確かめる必要があります。 - 民泊(住宅宿泊事業)は別の制度で、神戸市では住居専用地域などで実施が制限されています。今回の条例改正は旅館・ホテル営業の基準に関するものです。

まとめ

- 2026年4月、神戸市は旅館業条例の構造設備基準を一部緩和し、ICTによる無人対応も明文化した。 - 市が示す理由は、国の要領の改正、人手不足とICT化、営業形態の多様化。 - 2025年の市内延べ宿泊者数は778.7万人で過去最高。ただし京都・大阪と比べると規模は小さく、外国人比率も低め。 - 緩和の影響は、今後の開業状況や周辺環境への影響を見ながら、継続して確認していく必要がある。

参考資料

- 神戸市「『神戸市旅館業法の施行等に関する条例』の一部改正の概要」(2026年4月1日) - 神戸市記者発表資料「2025年 神戸市延べ宿泊者数(確定値)」(2026年9月29日) - 観光庁「宿泊旅行統計調査」2025年年間確定値 - 神戸市ホームページ「旅館・民泊営業者へのお知らせ」「住宅宿泊事業(民泊)」

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